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グローバル恐慌は、企業の資金調達難という形で確実にカネの世界からモノの世界に伝播する。
多くの企業が資金繰り難に陥れば、次にはモノの世界そのものの縮減現象が起こり始める。
予定していた資金調達が出来なくなれば、企業は仕入れを手控え、設備投資計画を下向き修正しなければならない。
その動きは仕入れ先や下請け業者、そして機械メーカーに波及する。
お互いに信用供与を取りやめて現金取引に切り替えざるを得ないという問題も発生する。
それに耐えられない企業は経営が行き詰まる。
経営が行き詰まる企業が増えてくれば、彼らの取引先はもとより、彼らに融資している金融機関にも影響が及ぶ。
銀行倒産も出ることになる。
すると、そのことがさらに資金枯渇問題を深化させ、信用収縮がスパイラル的に悪化する。
このような状況が広がれば、心理的にも経済は縮小モードに入る。
投資計画は先送りにしよう。
新規採用はとりやめよう。
内定は取り消そう。
かくして、負の連鎖の波紋が果てしなく広がることになる。
一方、消費市場にも打撃が及ぶ。
債券や株式の価値減価で家計が損失を蒙れば、それは消費低迷をもたらす。
そもそも、企業の生産活動が縮減して一雇用調整が進めば、そのことが個人消費を直撃することはいうまでもない。
これらの点に加えて、今回の急速な不況深化との関わりで見落とすわけにいかない問題がもう一つある。
それは、「消費の金融化」という問題である。
今回、急速な不況化の中で世界的に劇的な打撃を受けているのが自動車産業だ。
それはなぜかといえば、自動車というものの売れ行きが、金融に極めて大きく依存しているからである。
自動車ローンあってこその自動車産業だというのが、今日的な実態だ。
信用収縮の中で、自動車ローンについても、融資基準の厳格化など貸し渋り傾向が強まることになれば、そのことが自動車販売台数を直撃する。
自動車が最も典型的だが、消費の金融化は他の分野においてもみられる。
いまや、世界中で「カード社会化」が進んでいる。
クレジット・カードがなければ、世界的に個人消費が激減することは間違いない。
このような仕組みが出来上がってしまっている中で、信用が収縮すれば、消費市場が大きく沈降するのは避け難いところだ。
だが、カネの世界だけのマネーゲームが自己増殖を続ける状態では、モノの世界がどうなろうと、カネの世界は暴走し続ける。
そして、ついに暴走が転倒につながった時、その衝撃がモノの世界に対して一気に縮減圧力をかけて来るという展開になる。
その意味で、恐慌はモノとカネとのデイカップリング度が高いほど、実体経済を震憾させる度合いも大きくなるのだと考えられる。
他方、モノの世界への影響伝播の速さという意味でも、今回の展開には目を見張るものがあった。
ものの二カ月もしないうちに、金融恐慌は大不況に発展したのである。
これは、まさしくグローバル時代というものの特性だ。
「つながり過ぎ」状態となっているのはカネの世界ばかりではない。
モノの世界についても、グローバルな生産・仕入・販売のネットワークにありとあらゆる企業たちが様々な位置づけで組み込まれている。
直接的にグローバル・ビジネスの最前線に立ってはいない企業でも、取引網の中で何らかのグローバルなつながりを形成している。
地球規模で取引網が広がる中では、その中に組み込まれていることを当事者たちが意識していない場合さえある。
そのような中で、例えば、アイスランドが巻き起こした金融ショックが、あっという間に巡り巡って、日本の地方企業や投資信託保有者に波及して来ることになる。
グローバル時代は全てのことが同時進行する。
恐慌も世界同時多発的であれば、恐慌がもたらす大不況もまた、瞬時にして地球を巡るのである。
以下に、世界同時大不況の実態をみる。
基本的に本節冒頭で整理したカネの世界からモノの世界への波及のメカニズムが効いている。
それに加えて、アメリカ経済の場合には、生来の借金体質がモノとカネの両側面にわたって膨張と過熱を煽って来たという点がある。
この借金体質の急調整を迫られる中で、経済活動の劇的な縮減が起きているという構図だ。
借金体質の一つの指標として個人貯蓄率がある。
そこで、一人当たりの可処分所得比でみたアメリカの個人貯蓄率の推移を二○○○年以降についてみれば、大きな流れとしては二○○一年後半から二○○八年半ばまでほぼ一貫した低下傾向をたどっている。
三%強をピークに、二○○八年初めにはほぼ貯蓄率ゼロのところまで落ち込んでいた。
その間に、四半期別あるいは月次ベースでは貯蓄率がマイナスとなる場面もあった。
ところが、二○○八年第2四半期以降は、久々に貯蓄率が高まる傾向に転化している。
二○○八年五月には、貯蓄率四・九%という最近のアメリカとしては異例に高い水準を記録している。
住宅バブルが峠を越えて、サブプライム問題が大噴出に向かう中で、アメリカ家計の自己防衛的な貯蓄立て直し行動がこの辺りから緒に就いたとみられる。
ローン依存型の消費行動にブレーキがかかれば、経済状況は全体として一変する。
モノは売れず、企業は儲からず、雇用は増えない。
行きすぎた借金経済化に歯止めがかかるのは、これも間違いなく経済活動の自己浄化作用の一つだ。
だが、この自己浄化作用が急激に進行すれば、それに伴うダメージは大きい。
このダメージを補って経済活動の大幅な落ち込みを防ごうとすれば、そこは政策が出動して不足分を補うしかない。
となれば、既にして大幅赤字の連邦財政に対して、ますます、負担がかかることになる。
実際に、前にみた金融安定化法(TARP)だけでも、名目GDP(国内総生産)比で五%という規模に達しているのである。
今後、さらにモノの世界を支えるための支出を増やしていかなければいけないとなれば、財政赤字が膨らむことは必至だ。
民間経済の借金体質が修正されればされるほど、政府部門の借金依存度が高まるというわけで、アメリカ経済の前途は極めて厳しくなっている。
今後、自動車産業を始めとする個別産業への支援も強化していくようなことになれば、財政負担はさらに高まることになる。
オバマ新政権の下でこの問題がどう処理されていくかが注目されるところだが、いずれにせよ、連邦財政の資金繰りがかなりの綱渡り状態となることは間違いない。
そうなれば、当然ながら、ドル相場に対する下押しプレッシャーも高まることになる。
カネの世界の崩落に伴って、すでにドルの足もとは、ただでさえ大いに危うくなっている。
それに加えて、実体経済の激しい沈降と、それに伴う財政ポジシヨンの大幅悪化が進めば、当然、ドル大暴落のシナリオが視野に入って来る。
緊迫した場面が続くアメリカ経済である。
ヒト・モノ・カネに関する単一市場の形成こそ、統合欧州が目指すところだ。
だが、それが進めば進むほど、今回のような状況下では、誰にとってもダメージが大きくなる。
そのことを現下の展開があまりにもよく示している。
そうでなくても、ユーロ圏の景気は秋口から既に後退局面に入っていた。
二○○八年第2.第3四半期を通じて、二期連続のマイナス成長を記録したのである。
既に転換点を迎えているところに今回の金融波乱が来襲した。
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